4.-② 膀胱がん (血尿が出た)

膀胱は腎臓で作られた尿をためる袋状の臓器です。内腔表面は伸縮性に富んだ尿路上皮で覆われており、膀胱がんの約90%が尿路上皮から発生します。比較的高齢者に多く、男性は女性の約4倍多く発生します。喫煙や化学物質との関連が指摘されています。
主な症状の一つが無症候性肉眼的血尿です。

「おしっこが赤いが痛みもない」
「残尿感がつづく」
「膀胱炎がなかなか治らない」

このような症状が出た場合には泌尿器科を受診しましょう。常に血尿が出るわけではなく、出たり出なかったりを繰り返します。膀胱がんが進行した場合や、悪性度の高い膀胱がんの場合、下腹部の痛みや排尿時痛などの膀胱炎様の症状を伴う場合もあります。

検査

尿検査の他、必要に応じて、超音波検査、CT検査、MRI検査、膀胱鏡検査 などを行います。

治療

治療は主に外科的手術、化学療法、膀胱内薬剤注入療法があります。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

膀胱に腫瘍が見つかった場合には、ほぼ必ず行なう治療です。治療でもあるだけではなく、切除した検体の病理検査を行ない、膀胱がんの進行の程度を調べる重要な検査にもなります。膀胱がんは筋層に浸潤しているか否かで治療が大きく異なります。筋層までがんが浸潤していなければ、TURBT(±膀胱内薬剤注入療法)のみで治療が完結できる事も多々あります。ただし膀胱がんは再発を来しやすい性質があり、術後も定期的に外来にて膀胱鏡での再発チェックが必要です。

引用) 国立がん研究センター がん情報サービスより

ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術

筋層浸潤がんでも転移が出現していなければ、手術治療(±化学療法)により根治を目指せます。膀胱がんに対しては放射線治療では根治は難しく、転移がある場合には化学療法・免疫チェックポイント阻害薬による治療を検討します。
手術支援ロボット (ダヴィンチ)参照

出血量・腸閉塞の低減

膀胱は尿の排泄路・尿を溜める袋であるため、膀胱を摘除すると新たに排泄路も作成(尿路変更術)しなくてはなりません。そのため膀胱全摘除術は比較的手術が長時間に及びます。従来の開腹手術では、長時間の手術により出血量が増え、腸管が外気に長時間晒されることにより術後の腸閉塞のリスクも高い傾向にありました。ロボット手術においては、腹腔鏡下に手術を行なうことにより、出血量は激減し、腸管が外気に晒される時間も極めて短くなりました。代用膀胱を作成する場合にも、前立腺がん手術と同様に、尿道と代用膀胱の吻合をロボット鉗子操作により繊細に縫合できるため、術後の吻合不全のリスクも軽減されています。
開腹手術に比べて手術の傷も大幅に小さくなり、痛みの軽減だけでなく、術後の創部感染も減少しています。

3タイプの尿路変更術 (尿管皮膚瘻、回腸導管、新膀胱=代用膀胱)

尿管皮膚ろう 

回腸導管 

代用膀胱

尿管皮膚ろう 回腸導管 代用膀胱
方法 尿管を腹壁に直接つなぐ 腸管を使い、尿管から腹壁への通り道にする 腸管を縫い合わせ、尿を溜める袋を作る
利点 手術が簡便
侵襲が少ない
術後の合併症が比較的少ない 腹壁に袋をつけなくてよい
欠点 狭窄を来しやすい
尿を溜める袋が必要
侵襲が比較的大きい
尿を溜める袋が必要
侵襲が大きい 排尿困難や尿失禁を伴う

膀胱がん ロボット手術(+回腸導管造設術) 入院スケジュール

1日目 入院 検温、血圧測定、採血など
低残渣食(手術前に腸管内に便を溜めすぎないようにするため)
2日目 21時以降は食事ができなくなります
3日目 手術当日
手術終了後はベッドで安静に過ごしていただきます
4日目 歩行可能です
5日目以降 飲水を開始し、腸の動きを確認しながら食事を開始します
10日目以降 尿管に留置されているカテーテルを抜きます
14日目以降 パウチ(採尿袋)を貼り替える練習が終われば退院(回腸導管の場合)

※経過により適宜変更があります。