4.-⑦ 骨盤臓器脱(膀胱瘤・子宮脱・直腸瘤)
骨盤臓器脱とは、膀胱・子宮・直腸などの骨盤内にある臓器が下垂して膣口から脱出してくる状態です。骨盤内臓器を支えている筋肉や靭帯等の組織の支持力が、出産や加齢により低下することが原因です。また強い腹圧は骨盤底に大きな負担をかけるため、慢性的な便秘、肥満、重い物を持つ仕事を長年続けている方もなりやすいとされています。現在では経膣分娩を経験した約30%の女性に骨盤臓器脱がみられると言われています。
陰部にピンポン玉のようなものが触れる、股の間に何かが挟まっている感じがする、という症状で気づく事が多く、横になって寝ている時には症状がなく、夕方になると症状が出てくることが初期には多くみられます。常に受ける重力と加齢で進行する骨盤底筋力低下のために、症状はだんだんと悪化し、重症になると常に体外に飛び出た状態になり、下着にこすれて出血したり、歩行に支障が出たり、排尿や排便に支障をきたすこともあります。
<骨盤底筋: 骨盤下部を支える筋肉・靭帯の総称>
<骨盤臓器脱 (膀胱瘤・子宮脱・直腸瘤)>
検査
内診台での診察、症状により超音波検査、CT検査、MRI検査、尿流測定、残尿検査、チェーン膀胱尿道造影検査 などを行います。治療
ごく初期であれば今後の症状進行をおさえる目的で、骨盤底筋体操の継続をお勧めします。また骨盤底筋をこれ以上傷めないことも重要であり、重い物を持ちすぎない、便秘の適切な治療をすることも必要です。脱出が軽度の場合には、膣にペッサリーというリング状の器具を挿入する方法があります。定期的な交換が必要で、人によっては効果が無い場合や、膣の炎症を起こす場合があります。
脱出が高度の場合には、有効なのは手術治療のみとなりますが、根本的に治療することが可能です。手術方法によって合併症や再発率が異なるため医師と相談が必要です。
ロボット支援腹腔鏡下仙骨膣固定術
支持力が低下した靭帯・筋の代わりに、腟-膀胱、腟-直腸の間にメッシュを挿入し、メッシュの反対側を仙骨前面の靭帯に固定することにより、下垂した臓器を吊り上げ臓器脱を治す治療です。その効果は非常に高く、再発率も低いことが特徴です。
手術支援ロボット (ダヴィンチ)参照
緻密な剥離とメッシュの固定
メッシュを挿入するために、腟と膀胱・直腸の間を剥がす(剥離する)には緻密な作業が必要です。剥離が上手くいかなければ、出血や膀胱および直腸の損傷をまねく事になります。また何ヶ所も糸で縫合しメッシュを固定する必要があり、素早く丁寧に縫う必要もあります。ロボット手術は丁寧な剥離とスピーディーな縫合に適しており、合併症が少ないうえに効果の高い手術が行えます。《Walters MD, et al. Obstet Gynecol.2013; 121: 354-74.より改変》
骨盤臓器脱 ロボット手術 入院スケジュール
1日目 | 入院 検温、血圧測定、採血など 21時以降は食事ができなくなります |
2日目 | 手術当日 手術終了後はベッドで安静に過ごしていただきます |
3日目 | 朝から飲水、歩行可能です |
4日目 | 通常のお食事が可能になります |
5日目以降 | 退院予定 |
※経過により適宜変更があります。
※メッシュが固定した組織になじむまで、1ヶ月ほどは過度な腹圧(重い物をもつ、便秘)への注意が必要です。