4.-⑧ 過活動膀胱・尿失禁

尿失禁とは自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう事です。尿失禁にはいくつかのタイプがありますが、主なタイプとして腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁があります。
腹圧性尿失禁は、尿を漏れないよう保持する筋肉である尿道括約筋が弱くなる事で生じ、くしゃみをしたり屈んだり重い物を持ったりする時など、お腹に力が入った時に尿漏れが起こります。妊娠・出産・加齢・肥満などが原因であり、慢性の便秘や咳があったり、重い荷物を日常的に持つ人も生じやすいと言われています。
切迫性尿失禁では、急に尿がしたくなり我慢できずに尿が漏れてしまいます。膀胱が勝手に収縮してしまう事が原因であり、脳疾患による神経障害の一つとして生じることもありますが、多くの場合は他の疾患とは無関係で、膀胱が過敏となることで生じます。膀胱が過敏となって尿がたくさん溜まっていなくても膀胱が収縮すると、急に尿意をもよおしたり、何度もトイレに行きたくなったりしてしまいます。これを過活動膀胱と言い、女性だけではなく前立腺肥大症の男性にも起こりやすい症状です。前立腺肥大症などで尿が出にくい状態が続くと、尿を出すために膀胱に負担がかかります。この状態が続くと膀胱の筋肉が痛み、尿意が強くなってしまいます。

(資料提供 グラクソ・スミスクライン)

検査

尿検査、残尿測定検査の他、症状により内診台での診察や超音波検査などを行います。

治療

軽度の腹圧性尿失禁は、緩んだ骨盤底筋を強くすることで改善が期待できます。この骨盤底筋体操を数か月継続し、また肥満がある方は減量するとさらに有効です。
尿失禁量が多い場合には、手術により改善することも見込めます。この手術は「TVT手術」または「TOT手術」と言われ、尿道を支えるようにメッシュ状のテープを埋め込みます。身体への負担は少なく長期にわたって効果が持続することも期待できます。
切迫性尿失禁には薬物療法が有効です。これらの薬は膀胱の異常な収縮を抑え、尿を快適に溜めることができるようになります。緑内障や前立腺肥大症の程度によっては安全に使用できないことがあり、医師の診察が必要です。また飲水量の調整や骨盤底筋体操も併用して行なうこともよいでしょう。
薬物療法で効果が不十分な場合には、膀胱内ボツリヌス注入療法を行なうこともあります。膀胱内にカメラを挿入し、膀胱の筋肉に異常収縮を抑える薬剤を注入します。その効果は通常半年程度続き、繰り返し行なう事が可能です。

TOT手術、TVT手術

TOT (Trans-Obturator Tape) 手術、TVT (Tension-free Vaginal Tape) 手術の略で、1cm幅の医療用テープを尿道を吊り上げるように留置することで、腹圧時におこる尿道のぐらつきを抑え、尿失禁を低減します

膀胱内ボツリヌス注入療法

尿道から膀胱鏡を挿入し膀胱壁にボツリヌス毒素を約20ヶ所注入します。ボツリヌス毒素に膀胱の筋肉の異常な収縮を抑える作用があり、約半年間効果は持続します。ボツリヌス毒素は美容外科での顔のしわ取りなどにも使われており安全に使用できる薬剤です。

 

 (資料提供  久光製薬)  【監修 東京女子医大東医療センター 骨盤底機能再建診療部/泌尿器科 教授 巴ひかる先生】)
  https://www.hisamitsu-harm.jp/upload/save_image/03231056_623a7e66bf1bf.pdf

(資料提供 グラクソ・スミスクライン ボトックスによる過活動膀胱・神経因性膀胱の治療を受けられる患者さん・ご家族へ)【監修 鳥取大学医学部泌尿器科准教授 本田正史先生】